【コラボレーション】食卓から考える、あたりまえへの恩返し(ピエトロ:高橋泰行さん、松田詩織さん)
福岡・天神の一軒のスパゲティ専門店から始まり、現在全国のレストラン運営に加え、ドレッシング事業も手がける株式会社ピエトロ。「しあわせ、つながる」をテーマに、SDGsの活動にも力を入れており、お客様、お取引先様、働く社員の方々が未来も幸せであるために、そして未来を担う子供たちのためにさまざまな取り組みをされています。ヤマチクはピエトロさんのレストラン専用の「サラダのためのお箸」を開発しました。今回は、社長の高橋泰行さん、広報室の松田詩織さんへのインタビューを、ヤマチクの山崎を交えた座談会形式の記事でお届けします。
サラダが美味しく食べられるお箸ができるまで
高橋さん:初めて山崎さんとご縁ができたとき、山崎さんは三代目としてヤマチクを継承すべく、南関町に戻ってきたばかりで、なんとかしてこの竹のお箸を広めていきたいと話していました。
ちょうどその頃、社会ではSDGsが注目され始めて割り箸に対する批判的な風潮が生まれ、どの飲食業界の会社さんもプラスチック箸にシフトしていったタイミングでした。割り箸が実際に環境に良いのか悪いのか自信を持って判断する前に雰囲気に押され、レストランで使用しているお箸をプラスチックに変更したものの……これって結局石油製品だよねと、本当に環境に良いことなんだろうかと疑問を持っていました。
そんな時に山崎さんに出会い、竹のお箸はどうなんだろうと思ったんです。しかし、竹のお箸は食洗機に入れると曲がってしまうことが当時の常識だったのでレストランで使うには現実的に難しいかなと考えていました。
ところが、山崎さんから後日、すごくいいものを作りましたからと連絡をいただき、ピエトロのために作った竹のお箸をプレゼンしてもらったんです。軽くて、サラダに入っているコーン一粒でもすごくつまみやすい。ドレッシングを作っているピエトロだからこそのお箸を作りました。食洗機も使えますというお話で。いいなぁと思いつつ、長い間使ってみないとわからないところもあったので、いくつかサンプルをいただきました。
しばらくうちのお店で実験的に使わせてもらったところ、非常に評判が良かったので少しずつ追加の注文をさせていただいて、以降ほぼ全ての店舗でずっと使っています。
山崎:ヤマチクのお箸は、純国産で、さらに手仕事の工程が多いためプラスチックのお箸よりも絶対コストが高くなってしまうんです。だからご提案するにあたり、環境に対する良さに加えてどういう要素があれば必然性があるだろうかと、ピエトロさんのレストランに足しげく通いました。どんなタイミングでお箸が使われているかをずっと観察していましたね。
その時、一番お箸が使われていたのはサラダだったんです。サラダはドレッシングの事業をされているピエトロさんにとってただのサイドメニューではないはず。サラダが食べやすく、かつ地元九州の資源である竹を使い、環境が循環し、竹に関わる人の生業を守ることができるお箸だとご提案しました。
高橋さん:コンセプトもお箸自体のクオリティも素晴らしく、さらに本社を構える福岡に近い南関町で作られている。地元に帰ったらみんな仕事がなくて大変だというような話も聞いてたので、お箸を使うことで、その地域の人たちのサポートになったらいいなという気持ちもありました。竹は、日本の限られた資源の中でも将来に続いていくものだと感じていたため、環境への優しさという面からも導入を決めました。
使いやすい、曲がらない、傷つかない、飲食店にぴったりな竹の箸
高橋さん:試験的に使っているときから、現場からこれすごく良いよという話がすぐに出ましたし、私個人も軽くて先が細くて使いやすく、良さを実感していました。レストランに来てくださったお客様からも「これどこで売ってるんですか?」というお声をいただいたり、とても使いやすいと評判です。実際にお店でも販売させていただいています。
さらに、実はオペレーション側としても傷がつきにくいという良さがあります。プラスチックのお箸って結構傷がつくんですよ。いくら丈夫で長持ちしても傷だらけになったら使えなくて廃棄することになってしまいます。ヤマチクのお箸は傷つきにくくて曲がらないので、基本的に廃棄することはほぼない。ずっと使えるんです。
滑りにくくて先が細いことから、厨房のスタッフも料理の盛り付けなどに使っているそうで、当初の期待以上にみんな喜んでいます。結果として確かに単価は高くなったけれど、プラスチックのお箸より長持ちしているので費用的にも大きな負担にはなりませんでした。
ちなみにこの竹のお箸に共感して素敵な会社だなと思い、ピエトロでアルバイトを始めた方もいらっしゃいます。
山崎:嬉しいですね。 「竹の箸や天然素材で作られているお箸を使ってる」=「感じがいいお店」というイメージは、この数年で強くなったんじゃないでしょうか。割り箸も一つのおもてなしの形だし、便利なプラスチックを使うところがあってもいい。そんな中、こだわりのものを使うことで生まれる魅力があるんじゃないかなと思います。
環境を想う、ピエトロの気持ちは感謝から
高橋さん:国連がSDGsの考え方を広め始めたとき、すごく良いことだなと思ったんです。でも、当然お金も時間もかかるし、社長が言っているからと無理矢理やるものでもないだろうなと。
一方で、私たちが商売できているのは社会のおかげで、社会のいろんなものを使わせてもらっているからこそ恩返しをしなきゃいけない。そして今、世界中で困っている人がたくさんいる。だからそれに対する恩返しがしたいと社員に伝えたところ、特に若い人が共感してくれたんです。
そこからSDGsのプロジェクトや部署を作って、小さくてもいいからコツコツと活動していきました。竹のお箸もその一つで、他にも石灰石を織り交ぜた名刺や非食米を使ったライスレジンで作ったビニール袋などがあります。それを少しずつお客様に知っていただき、良いことがだんだんと広がり、さらに共感して行動する人が広がっていったら世の中もっと良くなる。そんな動きがだんだん社内でも広がっていきました。
良いことって、それをしなきゃいけないとか、中にはそうすると株価上がるよとかいう人もいるけれどそういった発想ではなくて、恩返ししたいというシンプルな気持ちが根っこにあります。
ピエトロの経営基本方針の中にも「ピエトロは、感謝してお客様を大切にします。」という言葉があります。お客様を大切にするのは、もちろんどこでもやっていることだと思いますが、お客様が数ある飲食店の中でわざわざうちに来てくれた、 ドレッシングなんて、何百本といろんな種類がスーパーに並んでいるにも関わらず、うちを選んでもらった。それに対する感謝の気持ちをもとにこうした取り組みを行っています。
「ありがとう」の反対にある「あたりまえ」を見つめる
高橋さん:「ありがとう」の反対は「当たり前」だとよく言われますが、正に反対の位置にあるんだろうなと思います。うちの会社では、「“未来へ”しあわせ、つながる」というビジョンに沿ってさまざまな取り組みをしています。私は当たり前に感謝できない人って、幸せもなかなか感じられないんじゃないかなと考えていて。だからこそ普段当たり前だと思いがちなことも、これは当たり前じゃないんだと感謝することが幸せにつながると思います。
うちは博多湾にある能古島に「のこベジファーム」という農園を持っていて、野菜の栽培もしているんです。野菜ってスーパーに行けば安くすぐに買えるんですが、本当に作るのが大変なんですよ。畑で種を蒔いて、種蒔くにも腰が痛くなったり、その後も水あげて、肥料をあげて、雑草を抜いてやっと収穫できる。あんなちっちゃい種が大きくなっていくこと自体が当たり前じゃない。
そういうことをしていると、食べ物は誰かが一生懸命育ててくれたものだという感謝の気持ちが生まれたり、食べ物を食べられることや我々が今生きていけることが当たり前じゃなくてありがたいことなんだと気付かされます。
山崎:SDGsの根幹には多分想像力があって、自分が直接関わってない世界に思いを巡らせる力があるかどうかだと思うんです。「これも誰かが一生懸命作っているんだろうな」とか「こういう考え方の人もいるんだろうな」みたいな想像を巡らすためのツールとしてお箸があるといいなというのが僕の思いです。
でも、これはお箸に限らないと思っていて。野菜一つやドレッシング一つにだって信じられないぐらいの人数が携わって作られていることは、誰しも知ってはいるけれど、そこに思いを巡らせられているのかが鍵なんじゃないかなと考えています。
高橋さん:うちの会社は中小企業のちょっと大きい方ぐらいなんですが、会社の規模に応じてちょっとずつしか社会に対する取り組みはできないんだろうなと思います。
でも、平和活動をしている長崎の高校生が「僕たちは微力ではあるけど無力じゃない」という言葉を残していて、ものすごく感動したんですよ。それぞれができる範囲でできることを一生懸命やって、共感する人たちが広がっていくと、世の中は良くなるんだと思います。うちも大きいことは正直言ってできないけれど、できることからちょっとずつやっていきたいです。そういった小さな行動によって社員やその家族が仕事や会社に対して誇りを持ってくれたり、モチベーションが上がるなら、大きな宝物だなと思います。
松田さん:我々には、先代の村田が残した言葉が詰まった「ピエトロスピリッツ」というものがあって、その中でも感謝が大切にされています。私も入社当時から感謝という言葉をたくさん浴びてきたんです。
ピエトロは、今年の12月9日で創業45年目を迎えます。私が生まれるよりもずっと前から支えてくださったお客様やファンの皆様がいるからこそ、私たちも今こんなに楽しく働けていると思うとやっぱり全てに対して感謝だなと。
今後も感謝の気持ちを忘れずに、ピエトロが、皆様に愛していただけるような企業であり続けたいです。
ピエトロ様の社会・環境への取り組み(SDGs)はこちらからご覧いただけます。
対談を経て
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