【対談】「Made in KYUSHU」の誇りを胸に。
食と道具からひもとく、お互いの共通点とこれからの豊かな食卓(やまや:山本さん、ヤマチク:山崎)

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福岡を拠点に辛子明太子をはじめ、だしや飲食店、アグリ事業など、総合的に食をプロデュースする株式会社やまやコミュニケーションズ。そして、熊本県南関町で半世紀以上、純国産の竹のお箸づくりを続ける株式会社ヤマチク。 今回、やまやの「うまだし」をご愛用いただくお客様へのノベルティのお箸、うまだしオリジナル「煮物のための菜箸—煮物名人—」と、Yamaya Factory Terrace(やまやファクトリーテラス)のレストランで使用する「めんたいこを美味しく食べる竹のお箸」の開発を通じて、両社のコラボレーションが実現しました。

ともにお互いの会社の3代目にあたり、九州から世界を見据える、やまやコミュニケーションズ取締役の山本さんとヤマチク代表の山崎。食と道具、異なるアプローチでものづくりに向き合うお二人に、これからの組織のあり方や地域への思い、そして「あたりまえ」の日常への感謝について、語り合っていただきました。

左)ヤマチク代表山崎、右)やまやコミュニケーションズ取締役の山本さん

食卓に関わるもの同士、そして海外から見つめ直した「家業」の価値

山崎: お互い食卓に関わるものを作っている者同士、三代目同士ということでよろしくお願いいたします。山本さんは高校からイギリスへ留学し、13年ほど海外にいらっしゃったんですよね。

山本さん: はい。2025年の春に帰国して家業であるやまやに参画したのですが、海外から日本を客観的に見つめたことで、改めて日本の食文化のレベルの高さや豊かさを再認識しました。特に九州・福岡の食は、間違いなく世界に誇れる素晴らしいコンテンツです。 一方で、日本と海外の組織文化として少しギャップを感じた部分もありました。海外ではみんなガツガツしていて「上に行きたい!」という雰囲気で育つのに対し、日本はベテラン層が優秀すぎるがゆえに、同世代の若手が少し「受け身」になっているようにも見えました。ここはもっと若手が自ら手を挙げ、のびのびと挑戦できる環境をつくっていきたいと思っています。

山崎: 若い人がガツガツ挑戦できる環境は本当に大事ですよね。僕もIT企業から家業に戻ったときは、ぶっちぎりで年下でした。2024年に代表に就任して、一番にやらなければいけないと思ったのは「ミッション・ビジョン・バリュー」の制定でした。元々うちはOEM(受託製造)が100%の会社だったので、自分たちで売り上げを作る要素が一切なかったんです。ビジネスモデル上、黒子に徹するしかなく「自分たちが作った」と声を大にして言えない。それは、職人たちにとってモチベーションを保つのが本当にきつい状態でした。 僕の原動力は「働いている人たちが精神的にも物質的にも正当に評価される仕組みをどう作るか」です。そこで、全く未経験だった営業やブランディングを学び、自社ブランドを作り始めました。さらに、従業員自身が「自分は会社にどう貢献するか」を言語化して希望金額をプレゼンする「自己申告制の給与制度」も導入したんです。自分で目標を決めることで「働くことの自分ごと化」ができ、責任感も生まれました。

「うまだし」と「明太子」、食と道具が交わるコラボレーション

山本さん: 山崎さんのその「脱・下請け」への挑戦や、お箸作りを通じてあらゆるものへの感謝を提案されている姿勢に、私は深く共感しているんです。弊社の「うまだし」を長くご愛用いただいているお客様には、日々の食事を大切にし「丁寧な暮らし」を心がけている方が本当に多くいらっしゃいます。そうしたお客様へ感謝の気持ちを伝える贈り物として、これ以上にふさわしいものはないと、今回お声がけさせていただきました。

山崎: それは本当に嬉しいお言葉です。今回選んでいただいた「煮物名人」というお箸は、煮物を作るときに火の通りを確認する「竹串」の代わりになるものを作りたくて開発しました。毎回使い捨ての竹串はもったいないですからね。 実は、このお箸の開発者である弊社の営業担当が、「いつか、こだわりの出汁や調味料を作っているメーカーさんとコラボレーションするのが夢なんです」と社内で語っていたんです。だから今回、やまやさんからお話をいただいたときは、その夢が一つ叶った瞬間でもありました。

山本さん: もう一つ、本社に併設された「やまやファクトリーテラス」のレストランで、できたての明太子をより美味しく食べていただきたいという想いがありました。明太子って、普通の割り箸だと皮が張り付いてしまったり、つぶつぶが掴みづらくて綺麗に切れなかったりするんですよね。こちらのお箸だと「明太子の一粒一粒までつまめる!」と社員からも好評です。

山崎: ありがとうございます。実際にお箸で明太子を食べて、明太子を切りやすく、最後まで綺麗に食べられるように、先が細くて四角い形状のお箸にしました。さらに、明太子の「つぶつぶ感」をデザインとしてお箸に取り入れて、目で見ても楽しんでいただけるものに仕上げています。

山本さん: 九州の豊かな大地が育んだ食材を、やまやが誇りを持って調理し、それを同じく九州の竹林から生まれたヤマチクさんの美しい竹箸で召し上がっていただく。味覚だけでなく触覚や視覚、そしてその背景にある「九州の自然や作り手の物語」までをお客様に五感で味わっていただくことができると確信しています。

作り手の誇りをつくる、「非効率なコミュニケーション」と「おもてなし」

山崎: お互いに都市部から少し離れた場所に「直営店舗」を構えていますね。やまやさんの「ファクトリーテラス」では、どのようなコミュニケーションが可能なのでしょうか?

山本さん: 今まで複数に別れていた工場を一つに集約したことで、お客様に明太子作りの全工程をご覧いただけるようになりました。さらにつけ込み体験やレストランも併設しており、やまやの食を体験していただけます。このレストランはお客さまだけでなく従業員も利用できる、社員食堂も兼ねています。お客様と境目なく同じスペースで過ごすので、自然とコミュニケーションが生まれるような構想です。お食事の後は、やまやの手がける商品が並ぶマーケットゾーンでお買い物も楽しめるので、やまやをフルで楽しんでいただける建物です。 都市部からは少し離れていますが、だからこそ「わざわざいらっしゃった方にどれだけおもてなしできるか」「心から楽しんでいただこう」という姿勢を何よりも大切にしています。正直、広告などは出していないんです。その代わり、ここで体験した感動やスタッフの接客を通じた「おもてなし」そのものが最大の発信だよねと。ありがたいことに、お客様の口コミやSNSを通じて魅力が広まり、地元の方にたくさん足を運んでいただいています。

 

山崎: 素晴らしいですね。ぜひ今度お邪魔させてください。弊社も工場を見ていただくことにより職人たちの意識が大きく変わりました。お客様から直接「すごいですね」とお声がけいただくことで、自分の仕事の価値を肌で実感できるようになり、今では職人自らが進んで工場案内をしてくれるほどポジティブな変化が起きています。 それから、うちは人口9000人の町にあるので、ファクトリーショップ「拝啓」を作ろうとした時は「こんな田舎に作って人が来るのか」と最初は猛反対されたんです。だからこそ、観光客向けだけではなく、地元の人が日常使いできる「地元の人に向けたお店づくり」をしました。例えば田舎ならではのお付き合いで、急にギフトが必要になることが多々あります。そんな時に、すぐに買いに来られるような価格と品揃えにしています。

また、接客ではあえてPOPを減らし、スタッフがお客様と直接会話をする「非効率なコミュニケーション」を大切にしているんです。その結果、口コミが増えたり、メディアにも取り上げられたりして、地元の人が「あそこ、テレビに出てたね」と自慢してくれるような場所になりました。南関町が誰かの目的地になっているのが嬉しいです。

やまやさんとの共通点として、広告に頼らず口コミで広がり、観光客が主なターゲットではなく、地元の方に来ていただける場所づくりというのがあげられますね。

あたりまえの日常に感謝して、次世代へつなぐ

山本さん: 山崎さんは、日々の暮らしや事業の中で「これはあたりまえではなく、ありがたいことだ」と感謝される瞬間はありますか?

山崎:食も道具も、誰かが一生懸命に手をかけて作ってくれています。毎日美味しいご飯が食べられることは本当にありがたいことですね。僕たちヤマチクのお箸も、その中の一つ。

だからこそただ作って売るだけでなく、「いただきます」のように、あらゆるものに感謝する日本の美しい精神性を一緒に伝えています。山本さんは、いかがですか?

山本さん: 日本には美しい四季があり、その時々にしか味わえない「旬」の食材があります。「出汁」の文化のように、目に見えないところにひと手間をかける職人技や、「最後の一粒まで食べきる」という作り手への感謝が込められた風習は、日本人が世界に誇るべき精神性だと感じています。 そして日常においては、新しい挑戦に踏み出せるのは、互いに支え合いながら並走してくれる仲間や家族のおかげだと、ふとした瞬間に感謝しています。

あと、イギリスから帰国して、24時間豊富な品揃えで迎えてくれる日本のコンビニエンスストアの存在には心から感動し、ありがたいなと実感しています(笑)。

山崎: あはは、その感覚、とても共感します(笑)。どれも日本の大きな魅力ですね。そうした素晴らしい「食の豊かさ」を次世代へつなぎ、さらに発展させていくために、山本さんは今後、拠点を置かれているここ九州の地で、どのような地域貢献を描いていらっしゃるのでしょうか?

山本さん: 弊社の描く地域貢献は、自社が築き上げてきた技術や外食店舗という「プラットフォーム」をフル活用し、九州全体の食産業を共に底上げしていくことにあります。一次産業にも足を踏み入れながら、隠れた名品にレストランならではの付加価値を与え、国内外へ発信していく。それが九州を拠点とする私たちの果たすべき役割だと思っています。 山崎さん、これからもぜひ一緒に、九州から新しい豊かな食卓の価値を提案していきましょう。

山崎: こちらこそ、山本さん、ぜひよろしくお願いいたします。